2022.06.13
廃棄物由来の代替燃料、これは簡単に言うと家庭や産業から出た廃棄物で作った代替燃料のことだ。RDF(Refuse Derived Fuel),RPF(Refuse Paper&Plastic Fuel), SRF(Solid Recovered Fuel)と呼ばれる廃棄物から固形燃料を製造する技術がある。これからあらゆる製造業でカーボンニュートラルが進むにつれて、代替燃料を使用することは代表的な手法の一つになるであろう。世界各国では、どれくらい代替燃料の使用が進んでいるのか、いくらかの事例をご紹介します。
イギリス セメント・ガス製造業界
セメント製造のグローバルリーディングカンパニーの一つで、メキシコに本社を置くセメックス(CEMEX)は、イギリスにある自社のセメント工場を完全にClimafule(クライメフュール)という代替燃料で稼働すると発表した。Climafuleは家庭や産業から出た廃棄物から作られた燃料。この新たな取り組みは、セメックスが今年の終わりまでにヨーロッパで40%の二酸化炭素排出削減、2030年までに55%の削減目標の達成を支えるものだ。またコンパクト・シンガス・ソリューションズ社(Compact Syngas Solutions Limited; 以下CSS)は、廃棄物から水素を生産するテクノロジーを開発するため、イギリス政府から4,300万円弱(€1=142円)の助成金を勝ち取った。もしこのプロジェクトが成功すれば、2050年までにネットゼロ達成を目指すイギリス政府の大きなパートを形成するであろう。またこのCSS社はガス化プロセスにおいて二酸化炭素排出を減らすため、カーボンキャプチャー(carbon capture)の技術も開発中である。
フランス エネルギー事業大手
フランスもSRF(Solid Recoverd Fuel; 廃棄物固形燃料)で大きな一歩を踏み出している。フランスのENGIE社は森林のバイオマスからバイオメタンガスを作ることに成功してから1年経過し、現在はリサイクル不可能な廃棄物から再生可能ガスを製造している(ほとんどは食料、紙、段ボールそしてプラスティック等埋め立てされるような廃棄物から作られている)。また同社は2026年から毎年, Salamandreと呼ばれるプロジェクトで7万トンのリサイクルできない廃棄物を150GWhの再生可能ガスと45GWhの再生可能熱(これらの生産量は670台分の市バスの消費量と同等)に変換する。
再生可能エネルギーと言われ連想されやすいのは太陽光発電、風力発電等だが「廃棄物」から燃料を製造する廃棄物固形燃料も、とてつもないポテンシャルを秘めている。もちろんSRF等で燃料を生産するためには膨大な設備投資、サプライチェーンの構築等乗り越えなければいけない壁がたくさんある。しかし世界中で廃棄ロスが叫ばれる今日、廃棄物から作られる燃料は新たなスタンダードになる可能性を大いに秘めているのではないかと感じる。
・https://innovation.engie.com/en/news/interview/new-energies/benefits-biomass-energy-production/24938
・https://www.futurenetzero.com/2022/06/06/cemex-to-fully-operate-uk-cement-plant-on-alternative-fuel/